2017-06-05

ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス株式会社
小西直人社長[後編]

経営とは答えを出す仕事

経営者になって思うんだけど、経営って答えを出す仕事だなって。

でも答えが教科書には載っていない。
いつも思うんだけよね、どっかに答えが載ってないかな~って(笑)

あはは。本当、載ってて欲しいです。

じゃあ、どうやって答えを出すかというと、大雑把に言うと「好き嫌い」なんだよね。
これもまた、あんまり言い過ぎると誤解されるんだけどね(笑)

でも「好きと嫌い」が人生の経験の積み重ねで自分の中に出来てくるわけ。
好き嫌いをどうやって決めるかというと最後は哲学。「どっちが好き?」ってね。

段々と易しいことは答えを求められることがなくなってくるのよ。誰かが答えを出せるから。社長のところには、課長や部長ではどっちがいいかわからないことが来るんだよね(笑)

んでどっちがいい?って言われると好き嫌いだね(笑)
だからこそ、まあ、倫理観というのは、若い頃はわからなかったけど、だんだんと必要になってくるなと感じるね。

そういう意味で言えば、好き嫌いの判断基準になる経営者の倫理観は重要ですね。倫理観や哲学というものは、意識して磨いていけるものでしょうか。

そうだね。
でも、倫理を磨いたりだとか、哲学を高めようとかって特に意識するものではなく、日頃から「いい人とたくさん会おう」だとか「人の言ってることを素直にきこう」って、そういう事を意識して過ごしていくうちに自然と身についていくようなものかもしれないね。

一番いいのは「仕事に関係ない人と会って、そういう人たちと話をする」っていう事だと思っている。

やっぱり気が楽だし、上下関係もないし、会社の外に出ると社長だとか関係ないし、好きなやつは好き、嫌いなやつは嫌いってなる。それがいい。

僕にとっては(趣味の)ヨットの友達はすごくいいわけですよ。まったくイーブンというか、イーブン以下だよね、僕のほうが技術もヘタだし、経験もヘタだから(笑)
歳の上下ではなくて、相手を尊敬できれば相手が若くても尊敬できるし。
そういう仕事と関係ない付き合いをどれだけ持つかって本当に大切だと思ってる。(仕事関係だけの)狭い範囲の人付き合いだけだと、後々難しくなると思っている。

若い人たちはすごく仕事して残業もするし、高校の同窓会とかいかないんだよね。
僕はね、そういうのどんどん行けって言ってるの。
高校の同窓会なんて、もろ異業種交流会じゃないですか。ほとんど違う仕事に就いてるし、関係がイーブンでしょ。こんなありがたい人間関係はそうそうないよ。
そういった場所にも自分から行って、色んな話ができるようにならないとね。だからどんなに忙しくても同窓会は行って来いというんだけど、なかなか行かないね。(笑)

私もありがたい事に異業種の友人に恵まれていて、小西さんがおっしゃるようにそこはイーブンの関係で、役職や仕事の話関係なくありのままに人間性だけで付き合っているというか。
そういう中で気がつくと自分の発想の幅が結果として拡がっているというようなことは強く感じます。
社内だけの付き合いだとリタイア後の生活が寂しくなるというような話もよく聞く事がありますし、働けるうちに多様な人間関係を築くってすごく重要だと思います。

そうだね。一生懸命仕事をする人ほど、社外に人間関係を作らず邁進するような傾向もあるし、それは決して悪いことじゃないんだけどね。やっぱり外に目を向けるってこれからの時代はますます必要になると思う。


趣味といえば、小西さんは、料理も趣味でされますよね?

自分の趣味の中で料理は非常にいいと思っているよ。
料理を作るというのはは仕事とほとんど一緒だなとよく言ってる。

段取りだったり、完成イメージからの逆算だとか。

段取りをするのも勿論あるね。
例えば、野菜炒め作るとするじゃないですか。
完成品という野菜炒めがあって、これを時間軸でばらしていくと、最初に材料があって、そこから刻んで、油引いて、硬いものから入れて、火がとおったら柔らかいもの入れて、調味料入れてってプロセスやってると、それって仕事のやり方と一緒じゃない?

そうですね。

仕事って、これやろうといったときに、野菜炒めのイメージがないとできないでしょ。
だから料理をやって初めてわかった。仕事と一緒だ!これはって。(笑)

またご自宅でご馳走していただけるのを楽しみにしていますね!

あはは。是非やりましょう。

基本能力と論理的思考をどう身につけていくか

今村さんや若い人たちにお願いしなきゃなと思ってる事があって。
日本人が論理的にモノを考えるということが弱くなってきていると感じている。

学校でもなかなかそんなことを教えないし、「君これどう思う?」「どう考えている?」というような会話が無くなってきている。それに加えて、論理的に考える機会(長い文章を書く、本を読むなど)がどんどん無くなっている。そうすると、日本全体として、論理的に考えるということが減ってきているなって思う。

一方で、うちはネット看視とかゲームのデバック事業とかやっていて、よくセミナーでお母さん方に会うんだけども、論理的思考以前の問題だと思うことがある。

基本の基本というのがあって、「挨拶ができるか、気配りができるか、人の言っていることが理解できるか、チームワークで仕事ができるか」こういう基本能力がね、大事ですよって言ってる。

例えば、子供と若いお母さんたちがLINEなどでやり取りするのはいいんだけどね。
LINEなどで使う言葉(=「そう」「いいね!」「わかった」など短い言葉)でやり取りするばかりでなく、本来は、丁寧語や敬語、挨拶などネットの上でもやらないといけないと思っているんですよ。

あとは、ネットではなくリアルのところで(親が子に)見せてあげるってすごい必要で。

例えば玄関の靴揃えるとかね、お皿を洗わせるとか、タオルたたむとか、片付けするとか、子供の頃から率先してやって身につかないと、社会に入ってからでは身につかないと思うんだよね。だからネットがどんどん進んでいく社会だからこそ「親がこういうことをしなきゃいけない」ということを本当に根付かせる必要があると思う。

あとさ、よく言うんだけどさ、何かわからない事があったら、ネットで調べるじゃない?

はい、よく調べます

便利だから使えばいいんだけど。
問題が解決すると、「あーわかった」と思って何も覚えない。で、次のときに、また同じことを調べてしまう。

調べる前に「これって何なのかな?」って10秒考えたらぜんぜん違うと思うのね。覚えると思うのね。自分がこれってどういう意味なんだろ、こういう意味かな?と思って調べるのと、わかんないからすぐ調べるのとでは随分違うと思う。

ネットが広がった社会の新しい弊害、というかなんというか、生活スタイルで気をつけたほうがいいことは啓蒙してあげたいなと思う。

すごく納得できます。
誰かに聞く前に自分で考えるということって本当に大切だと思います。
僕の場合は、最初に勤めた会社で仕事を通じて学んだように思います。
先輩方から「とにかくまず自分で考えなさい」ってよく怒られました。
人って苦労して手に入れたものや情報って大切にするし覚えてるけど、安易に手に入れたもの、知り得るものってありがたみもなくすぐに忘れちゃう。
僕は、20代の頃、そういうことを教えてくれる厳しい先輩や環境がありましたね。

それはいい環境で仕事をしてきたね。人生ですごい得をしたかもしれないね。
考えることを習慣として10年続けた人と、そうでない人との10年後は大きく違うと思う。

だから、僕自身も先輩になって、後輩たちには「まず自分で調べなさい」って言ってきたんですよね。逆に言えばそういうのが当たり前の環境でした。

まあそういうことだよね。
それで、色んな人と話していると、スマホやネットがあるから悪いっていう話になりがちなんだけど、そんなこと言ったってもう(この流れは)止められないでしょって。
だから、スマホやネットがあることを前提にして、これどうやってうまく使うんだとかね、今までと違うネットの社会だからこそ、こうすればうまく使えるよとか、マイナスなことがプラスになったねという事を見つけていかなきゃいけない気がするね。

学生時代は「揉まれるバイト経験」をしよう

そして、今はね、若い頃から「揉まれるバイト」をしていない。「揉まれる」バイトっておかしいんだけども(笑)

今、バイトが揉まれないのよ。
揉まれないとはどういうことかというと、お客さんと折衝しなくてもできるようなシステムにしてあるということ。コンビニやファーストフードなど。マニュアルで対応できるから。声はかけているけど、お客さんと「会話」しているわけではない。
昔のようにお客さんに怒られたり、自分で判断して対応を考えたりするのが減った。

そういうバイトは僕が学生だった頃よりも確実に少なくなりました。

学生もそのほうがいいじゃん?ややこしいことしないでお金稼げたほうが・・・(笑)

僕は高校時代に個人でやってる様な小さな寿司屋でバイトしていて、そこの大将にしっかり揉んでいただきました。
先輩バイトの方とかにも所作一つでよく怒られました。
よほど、強烈な体験だったのか、今になっても思い出すくらいです。

それってありがたいよね。
子供の頃にそんなバイトして、色んな経験して、集団の中でいろんな話をして揉まれると、そのことってあとから、「あのときの経験って活きてるな」ってなる。

そういうバイトが最近少なくなっている気がするのね。今はお金を稼ぐだけになっていて、それ以外のことを覚えたりするのが、少ない気がする。
そうすると、 学生時代は楽しくバイトして過ごしているけど、社会に出てお客さん文句言われて、対応して、じゃあどうするんだって困難になって。学生と社会人の間に昔よりもっと格差があるような気がするんだよね。

産業構造的には、すぐ即戦力になることを求められているのに、大学ではそういうこと教えないし、バイトでは揉まれないし、そういう経験をしていないまま社会人になってしまわないといけない。これも日本が弱くなってる要因の一つだなと思わずにいられない。

これからの日本は今まで以上に変わっていく

今後、海外からの人が増えてくる。
今で200万人くらいか。今後はものすごく増える。年間数万人の単位で増えていくからね。国内の外国人比率は増える。1,000万人くらいまでは増える可能性としてはあるね。こういう社会になってくるよ、日本は。
そうすると、外国人が入ってきて、日本人の職がなくなってくると思う。今は飲食店で外国人のバイト多いよね。これがどんどん職域が増えてくると思うよ。
そうすると、日本人の若い子ってアルバイトが無くなってくるんじゃないかと心配しているのよ、本当に。

これから外国人労働者がする仕事は単純労働だけじゃなくなってくるでしょうね。

そうそう。逆に日本人のほうが単純作業しかできなくなる、今のままでいくと。

笑えない状況がすぐそこまで来ているのかもしれませんね。

これまでおよそ3世代に渡って「教育に何が必要か」ということをちゃんとやってきていないから、こうなっていて。おそらく回復するにはこれから2世代位かかると思う。

僕世代で親になっている人たちでも当然自分の子供の教育について真剣に考えていると思うのですが、教育って難しい。
その答えが見えにくいんですよね。何をどうすれば食っていける子供に育つのか?
そもそも、親である自分自身が食っていくのに必死だから子供にこうすればいいんだという背中を見せにくいと思う。

そうだね。
それで、親が忙しい中で子供を教育しようと思うと、簡単なのは勉強させることなんだけどね、でも実は(教育で大事なのは)勉強じゃないんだよね。

本当は、勉強をする前の力。その力が必要だと思うのね。
それを教えずに、勉強だけしろと言っても、結局は頭でっかちな人間ができるだけ。
じゃあそれでも就職はできるかもしれないけども、人生それでいいかというとそれまた違う話だからね。

はい。だからやっぱり、挨拶ができるとか、気配りができる、人を思いやれる。
大事なのはそういうところだと思うんですよね。

親の責任は自分の子供に生きていく力をつけてあげること

やっとこの年になってわかったんだけど、親の責任は「自分の子供が食っていけるだけの力、生きていく力をつけてあげること」だということ。

じゃあ生きていく力とは何かというと、さっき言った人間の「基礎力」があって、その上に「問題解決の力」があって、その上に「専門的能力」があるということなんだけども。

そういう能力をつけていくということを考えると、僕らの時代は大学に行っとけばいいという風潮があった。でも今は、大学にいっても幸せになるとは限らない。そういう能力がつくとは限らない。本当はもっと、商業高校とかが増えるべきだとおもっているのね。昔は実業高校というのが結構あったんだよ。世の中に出て、すぐ役に立つ人たちを育てる学校というのが本当にあるべきだと思う。昔はたくさんあったんだけどね。

この前、簿記を教えている学校(全国に30校くらいある学校)の理事長さんと食事したんだけど、この人なかなか熱血漢の人でね、簿記やいろんな資格をとって就職させるというようなことをやっている。

で、その人に「資格取るだけじゃ意味ないんじゃないですか?」って言ったらすごく怒られたんだけど(笑)、挨拶とかも結構厳しくやってらっしゃるところだった。

その人が言うには、今後は、少子化でね、多くの大学の経営は行き詰まる、短期大学はもっとしんどくなるって。卒業しても就職できないからね。じゃあ(不振の大学や短大を)買い取って、徹底的に資格取得や就職に役立つことを教えればいいというようなことを話したね。

10年位前かな、イギリス人のグレゴリー・クラークさん(国際教養大学副学長、多摩大学名誉学長)から話を聞いて、本当なるほど!と思うことがあった。

「日本の学生は大学で勉強しないことがよくわかった。でも昔はそれでよかった。」と言う訳だ。昔は日本の産業が製造業中心だった。製造業中心ということは、新卒で入っても、会社を代表して外へ出てやり取りするのは、主任さんとか係長になってからだ。5年から10年は社内で教育して、その後はじめて営業や交渉をするからね。大学は遊んでてよかった。企業がよく教育してくれた。

でも今は、日本の産業構造が流通とサービス業中心になっている。
僕がよく言う話なんだけど、ドラッグストアに行って、勤続15年の社員と昨日配属された新入社員に、お客さんが聞くことは一緒だよと(笑)。要は即戦力が必要でしょ。

即戦力とは、専門知識もあるんだけど、相手のことを聞いてそれを理解して、このお客さんは何が困っているからこういう解決方法を提案しようとか、気配りとか、そういうことをずっとやる力だよね。

今は、その「力」が求められていると思うよ。

CHARMING LIFE

色々、話をしたけどさ。
僕は、チャーミングライフを送りたいと思っているんだ。
それでね、チャーミングな人生を送るためには要素が必要だと思っていて。

おお!これは素敵なキーワードですね。僕が言うと失礼にあたるかもしれませんが、小西さんは本当にチャーミングな方だと思っています。

チャーミングな人生を送るためには、いろんなしんどい要素をいっぱい積み重ねて、はじめてチャーミングな人生を送れると思って作ったんだ。

これはオリジナルですか?

自分で作って気に入ってるんだよ。

ここに書いてあること実践して僕もチャーミングライフ目指します!

ハハハハ(笑)

小西さん、今日は貴重なお話を聞かせてくださりありがとうございました!今日のお話は僕に欠けている視点や発想がたくさんあって非常に勉強になりました。

頑張ってくださいよ。人の幸せを作る仕事は、人生で最も贅沢なことだと思うよ!

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